大通り(平成けやき通り)沿いで、存在感のあるシアーズホームグループの新本社ビル
シアーズホームグループ様は、お客様からの厚い信頼のもと、九州でも屈指の着工棟数を誇る総合住宅メーカーです。また、熊本県が推進する「よかボス企業(※)」に認定されるなど、積極的に「働き方改革」にも着手されています。 (※)自らの仕事と生活の充実に取り組むとともに、共に働く社員の仕事と生活の充実を応援するボス(企業の代表者)が経営する企業のこと。
2019年12月、旧本社横に竣工した、シアーズホームグループ新本社ビルは、「豊かなコミュニケーション」「働きやすい健康的なオフィス」など、働き方改革の要素も重要なコンセプトとして盛り込み計画されました。
そのプロジェクトに、コイズミ照明の強みを活かし、新たなチャレンジを試みた若手社員、濱口 沙織(開発営業・熊本営業所)と藤嶋 純也(照明設計・LCR福岡)の活動を取材しました。
プロジェクトにチャレンジするきっかけは2018年の秋、シアーズホーム様の非住宅部門を訪問した時でした。コイズミ照明の研究開発拠点R&Dセンターで採用している照明制御の国際規格「DALI」による「光環境から考える働き方改革」を説明した際、新社屋の計画とコンセプトに関する情報が話題にのぼりました。
「シアーズホーム様の働き方改革に、DALIによる照明制御は絶対にお役に立つはず」と感じた濱口は、すぐにアクション。照明設計のプロチームLCR福岡の藤嶋、R&Dセンターの役員やDALIの担当部門に声を掛けるとともに、シアーズホーム様にも数回訪問し説得することで、R&Dセンターでの見学会を実現させました。
見学会には、シアーズホーム様だけでなく設計の浦田デザイン室様や電気工事会社様もお越しになり、DALIが創り出すオフィス環境を体感するとともに、経験豊富なDALIのプロによる詳しい説明を行いました。
当時の気持ちを濱口と藤嶋に聞くと、「大阪まで自費でお越しいただけると聞いた時には、お客様の熱意を感じ、使命感がいっそう高まった」「実際にDALIによる働きやすいオフィスを体感いただけた時には、社員の皆さんの期待に応えたいという責任感が、いっそう高まった」「DALIは大都市圏の物件で採用されるという固定観念があると感じていました。働き方改革は、全国的な社会課題。今回の提案を地方都市で成功させることは、大きな意味を持つと感じた」と話します。「顧客」「仲間」「社会」、当社の起源である、近江商人の三方よしにも通じる、この三つのキーワードが二人のモチベーションの源泉となったようです。
国際標準の通信規格である『DALI』を使った照明制御は、規格に準拠した照明器具であればメーカーに捉われることなく同一システムで制御できるオープンな規格であり、「設備設計の選択肢が拡がる」という大きなメリットがあります。当社は業界でいち早く『DALI』に着目し、対応照明器具の取り扱いをスタートさせました。
とはいえ、本社の新築は照明以外の設備も含めて、様々な検討要素があり、見学会だけでは即採用という訳には行きません。濱口と藤嶋は、その時々のお客様の疑問や要望、DALIへの理解度等に合わせた複数回にわたる説明会、数えきれないほどのプランの提案等を「できることは、すべてやる」という意気込みで行い、2019年3月に正式採用が決まりました。
そして、用途ごとの最適な照明制御の設定、電気工事会社様との現場調整など、様々な過程を経て、施主様の要望に応える空間が完成しました。
個人作業が多いスペース。光色は太陽光の色温度を模した照明で、人間の体内リズムに準じて変化させていく設定とし、働きやすい光環境を実現しています。
「昼食時はあかりが落ちて暗くなるので、しっかり休憩が取れる」とお客様からも好評です。
社員が気軽に集い、食事や休憩、時には打合せも行うスペース。太陽光と連動したタイムスケジュールの設定で、まるで自然のなかにいるような光空間を再現しています。デスクワークと差別化し、アイデアが生まれやすい、リフレッシュできる空間になっています。また、吹き抜けのため、他の階の雰囲気や人を感じることもできます。
夜間照明は、日没時間に合わせて「DALIからの信号で自動的にブラインドを閉じて、ブラインドを照らす照明がゆっくり点灯する」ようにブラインドと連動するプログラムにしています。眩しさに配慮しつつ、地域に向けて存在感がでるような外観を光で演出しています。
提案~採用・納品とすべての過程で、忘れてはならないのが、DALIのプロである森 武史(特機商品部 デジタル事業推進室 室長)の惜しみない協力でした。
森は取り扱い初期からDALIを担当し、様々な案件を手掛けてきた実績があります。その森による、プラン作成時の技術的なアドバイスや施主様への説明時の同行、導入時の設定や電気工事会社様への説明、現場での微調整、導入後のフォローなどの多岐にわたる支援は、経験の少ない若手メンバーにとって、どれだけ心強かったか計り知れません。
森は、「新しいことにも物怖じしない行動力のある濱口、情報感度が高く細やかな提案ができる藤嶋、そして私の持つ経験とノウハウ、それぞれの持ち味が上手く機能し、納品までスムーズに進んだと感じます。また、お客様が抱かれる漠然とした心配事には、細やかなフォローと丁寧な説明を妥協なく行うことで、一つ一つご納得いただけるように努めました」と、当時を振り返ります。
熊本(濱口)、福岡(藤嶋)、大阪(森)と、距離を超えた3者のチームワークにより、地方都市では実績の少ないオフィスビルへのDALI採用が決まり、通常2~3年を要するところを1年弱で完工するというハードなスケジュールにも対応することができました。
・多くの案件を手掛けてきたからこその説得力と豊富な知識
・お客様がメリットやポイントを、具体的にイメージできる説明力
・お客様視点で、望まれたことに的確かつ迅速に応えられる対応力
・忙しくても、お客様と会社のために労力を惜しまない人間力
移転後のお客様の評価も上々で「最初は慣れない感じでしたが、今ではあかりの効果で、従業員の仕事にメリハリがつくようになり、残業時間も減り、業務効率の向上に繋がっていると感じる」(シアーズホーム坂本課長)といったお言葉もいただきました。また、存在感のある佇まいのためか「他のお客様や、競合の営業担当から問い合わせを受けることも多い」(濱口)と、地域でも注目される存在になっているようです。
施設の企画、設計、施工などに多大な功績のあったものに与えられる「2019年度照明普及賞」(一般社団法人照明学会 主催)を、シアーズホーム様、浦田デザイン室様と連名で受賞。地方都市のオフィスで、DALIの特徴を活かし、人間の体内リズムに基づく、各スペースの用途に適した「働きやすい空間づくり」などが評価されました。
このプロジェクトは、「これから加速すると見込まれる地方都市での働き方改革に、DALIは貢献できるツールだと実感した」「大都市だから、地方だからという根拠のない固定観念に縛られず、社会の流れやお客様の課題に向き合う姿勢を忘れずにチャレンジしていきたい」(濱口・藤嶋)と、若手二人には大きな学びを得る機会にもなりました。