学生たちのキャンパスライフの充実を願って 伝統ある大学の、新しい空間づくりにチャレンジ
難しい課題も「発想力×行動力×熱い思い」で克服

伝統ある大学の、新しい空間づくりにチャレンジ 難しい課題も「発想力×行動力×熱い思い」で克服

教育施設立命館大学 衣笠キャンパス 存心館

  • 所在地
    京都市北区
  • 事業主
    学校法人立命館 様
  • 設計・監理
    株式会社 綜企画設計 様
  • 施 工
    株式会社 竹中工務店 様
  • コイズミ照明
    担当者
    阿久津 佑子(照明設計)、
    安部 智皓(開発営業)

伝統ある大学の新しい空間づくりに
「あかり品質」でコミットする

関西最大級の規模を誇る立命館大学の衣笠キャンパス。その中心に位置し、キャンパスのシンボルである時計台を有する存心館は、1981年の建設で、学生食堂や書店などもあることから、学部を問わず多くの学生に親しまれてきました。その存心館が2018年3月末、新たなコンセプトのもとにリニューアルされることになりました。
その基本構想は、歴史ある建物の外観はそのままに、全般的なアメニティの向上やアクティブラーニングの一層の高度化、個人学習と相互の学び合いを結びつける新たな場の創設を図り、コンセプトが異なる3つのエリア(教室エリア、ラーニング・コモンズエリア、学生食堂エリア)を設けるというものでした。
その情報を入手し「教育機関という社会性の高い分野の、新しい空間づくりに貢献したい」(開発営業担当・安部)という思いから提案をはじめたプロジェクトで、主要メンバーとして携わった、コイズミ照明の阿久津 佑子(照明設計)、安部 智皓(開発営業)の活動を取材しました。

イメージ 立命館大学衣笠キャンパスの中央に位置する存心館。1981年の建設以来、多くの学生たちに親しまれてきた

過去の実績と信頼により今回のプロジェクトに参画

教育施設という「学びの場」では、特に視環境は非常に重要なポイントであり、照明器具メーカーには、設計力と商品力での高い信頼性が求められます。設計監理を担当する綜企画設計様とのこれまでの実績や信頼により、コイズミの照明が「ラーニング・コモンズエリア」「学生食堂エリア」で採用されることになりました。
「綜企画設計様とは、過去にいくつかのプロジェクトでお仕事をした実績があり、当社の設計力と品質も含めた商品力はもちろん、営業力、チーム力など、トータルで高い評価をいただいていました」(安部)。

イメージ 「選んでいただいた綜企画設計様の期待に応えなければという責任感が、大きなモチベーションになりました」と話す安部

空間づくりのコンセプトに共感
教育機関らしい、理想的な照明計画をめざす

担当したエリアには、それぞれコンセプトがありました。ラーニング・コモンズ(※)エリアは「思考・読解の空間」と「表現・交わりの空間」を調和的に配するというコンセプトで、個人の学びと集団的な学び合いの共存・循環を目指した空間です。学生食堂エリアは「和と落ち着き」をコンセプトに、食堂機能だけでなく語らいの場としても活用されます。
このコンセプトを聞いて「あかりの力で、学生たちが、ずっといたくなる、そして人とのつながりを大切にできる空間がつくりたい。という高い理想を抱いてプロジェクトに臨みました」(阿久津)。また阿久津は、照明計画を立てるにあたり、教育機関で重視すべき要素やポイントを、他大学の事例で詳しくリサーチするなど、思いを行動に移してからプロジェクトに臨みました。 (※) ラーニング・コモンズ
複数の学生が集まって、電子情報も印刷物も含めた様々な情報資源から得られる情報を用いて、議論を進めていく学習スタイルを、可能にする「場」を提供するもの。

イメージ 「ユーザー視点で、いまの大学にマッチした照明計画を意識しました」という阿久津

デザインコンセプトの実現に難題続出も
アイデア&現場検証で地道にクリア

多様な人が集う場でもあり、施主はじめ取引先からの要望も多岐にわたるなど、難しい課題にいくつもぶつかりました。
例えば、ラーニング・コモンズエリアでは、天井が平面ではなく、梁が突き出した構造のため、単にダウンライトやベースライトを並べるだけでは最適な視環境の確保が難しく、構造上の特性にあった提案が必要でした。また、綜企画設計様からは、存心館らしいテーマを持たせた照明の配置も要望されました。
そこで、主に利用する法学部らしさを「真っ直ぐな気持ちで、法に向き合う志」と捉え、長い直線のライン照明を、天井の構造にあわせて使用するなど、利便性と思想を両立した光環境を目指しました。
具現化する過程では「特殊な構造の天井に、ライン照明を最適に配置し、正しく納める(取り付ける)ことは、想像以上に難しいという意見も出ました。それぞれの難題に対し、綜企画設計様や竹中工務店様と、長時間にわたるアイデア出しや検証を重ねることで、器具選定や設置方法などの課題を、ひとつひとつクリアしていきました」(安部)と振り返るように、社内外の関係者で一体となり難しい課題を乗り越え、コンセプトをカタチにしていきました。

イメージ
イメージ ラーニング・コモンズエリアは、白色の清潔感のある照明を用い、集中しやすい環境を演出。また、建物の構造にあわせたライン照明は、空間と融合するスッキリとした印象を創り出しています

学生食堂エリアでは、綜企画設計様から「学生たちが集い、楽しめる空間を演出したい。そのために、天井にダウンライトをランダムに配置し星空のようにしたい」という強い要望がありました。ここでは、円形の建築デザインの学生食堂で、最適な視環境が整うように、ダウンライトを配置しつつ、コンセプトのひとつ「楽しさ」を強調することが課題となりました。
この課題に対して「あえて大きさの異なるダウンライトを使い、デザインで楽しさを表現するとともに、均斉度(=面の照度や輝度差)を充分に保つための検証を、何度も繰り返し行いました」(阿久津)。
このような試行錯誤により、良好な視環境とデザインコンセプトを両立し、建築構造とも調和した『輪の中に学生が集う憩いの場』が完成しました。

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イメージ 学生食堂エリアでは、円形の天井とともに、学生たちを柔らかく包み込むように照明を配置。大きな円形の照明は和を意識した「和傘」のイメージ。ランダムに配された大小のダウンライトは「星空」をイメージ

プロジェクト全体を通した弊社の対応について、綜企画設計 設計部 課長の橋本 敏 様からは「照明設計の阿久津さんは、こちらの無理な要望にも、後ろ向きな発言などは一切なく、照明の専門的な知識を使って、私のイメージを具体化してくれた。その技術力と頑張りには、心から感謝している」「こちらが営業に求めるのは、何といってもフットワークの良さ。常に動いている現場での、安部さんの素早い対応には、本当に助けられた」と、何とも嬉しいお褒めの言葉をいただくことができました。

イメージ 「コイズミにしかない強みを生み出し続けてほしい」と期待を寄せてくださる、綜企画設計 設計部 課長 橋本 敏 様

迅速・的確・柔軟がモットー
現場ファーストでプロジェクトを支える「縁の下の力持ち」

プロジェクトの成功に、欠かせなかったのが、社内、社外のさまざまな人をつなぐ「現場対応力」でした。
例えば、施主より現場での(あかりの)実験、検証を、急に要望されることが、度々ありました。ここでは、施主への詳細なリサーチを行い、それを社内の関係各所に正確にフィードバックし、シミュレーションプランを検討、作成。要望通りのスケジュールに、満足いただける内容で間に合わせることに徹底的に取り組みました。
また、現場で初めて仕事をすることになったサブコンの担当者とは、情報提供などでコミュニケーションをとる機会を大切し、信頼関係を構築。突発的な現場のトラブルにも、適切に対処することができました。
このような活動の積み重ねにより、プロジェクトをより良い方向に舵を切らせることに貢献しました。「現場ファーストを念頭に、関係各社との良好な関係作りを、いつも意識して行動していました」(安部)。現場にイレギュラーやトラブルはつきもの「迅速・的確・柔軟」な現場対応力は、重要な縁の下の力持ちとなりました。

リニューアル後の評価も上々
これからもお客様視点で、他社がやらないことにチャレンジ

完成後の存心館では、施設利用者が大幅に増え、大学側からも非常に高い評価をいただいています。その結果、設計監理の綜企画設計様が、立命館大学より表彰を受けられたとのことです。
活動を通してふたりが意識したことは「プロジェクトには、『他社がやらないこと=当社ができること』という意識をもって、アグレッシブに行動しました」(阿久津、安部)。