メタル素材を美しく照らし
建築の魅力を高める

三栄建設 鉄構事業本部新事務所

従業員エントランスホール。照明設計にあたってはDIALux evoを用いて照度や輝度を検証した

オフィス三栄建設 鉄構事業本部新事務所

  • 所在地
    大阪府大阪市大正区
  • 事業主
    株式会社三栄建設 様
  • 設計
    株式会社竹中工務店 様
  • 施工
    朝陽電気株式会社 様

「鉄のショールーム」への挑戦

三栄建設様の鉄構事業本部は、これまで数多くの大型開発プロジェクトに建築用鉄骨を提供してきました。2020年に完成した新事務所は、鉄骨製作へのプライドを込め「鉄のショールーム」というコンセプトを設定し、「ボロノイ分割(※1)」という手法を建築構造に取り入れた建物です。

設計を担当する竹中工務店様よりプロジェクト参画の打診があったのは2017年のこと。「年末に最初の照明プランを提出し、以降も検討を重ねながら数回にわたり提案を行いました。照明メーカーは他社も検討しておられたようですが、プロジェクトのコンセプトを読み解き、建築を美しく表現できる提案力とスキルに期待していただき、採用につながりました」(田近)

いかにメタル素材を引き立てるか

基本設計は2018年夏頃に終えましたが、照明プランはその後の実施設計でも細かな調整を重ねました。本件では、コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデルを再現することで、建築のプロセス全体を管理するBIM(※2)を全面採用しているため、初期段階であらゆる部材や器具の仕様を細かく決定する必要がありました。

そもそも建物の構造が複雑だったことから、何をどの手順で施工しなくてはならないかを正確に理解するためにも、BIMの活用は不可欠でした。竹中工務店様よりBIMの3Dモデルデータが提供され、当社をはじめさまざまな参画企業が照明や設備のデータを入れて検証を進めました。「当社はDIALux evoという照明シミュレーションソフトを使い、特殊な形状の建物の中で照明の光がどう広がるかなどを計算。CGですが、明るさや陰影など空間の表情を緻密に再現でき、照明プランに役立てることができました」(河野)

本件において、建物の主役はメタル素材です。照明設計においては、「照明器具は主張しないようできるだけ取り付けず、必要な明るさを確保する」をポイントに、いかに建築やメタル素材を引き立てるかに心を砕きました。メタル素材と照明器具を一体化させるアイデアのほか、階段の裏側には間接照明を隠す、H鋼に照明器具を取り付けポール照明にするなど、いくつもの「違う発想」を提案しました。また、「ボロノイ分割」の複雑な構造の中で、空間ごとにどれくらい「明るさ感」を出せるかは、設計支援ツール・REALAPS(※3)を使って検証しました。

イメージ 2Fコミュニケーションエリア。DIALux evoのほか、REALAPSによる「明るさ感」の検証も行った

随所に活きる「違う発想」

「違う発想」は、他にも随所に活かされています。例えば、執務室の天井に設置した照明は当初ソリッド シームレスを平行に並べる計画でしたが、ランダムに配置する方がより引き立つと考え、配置を変更。「ボロノイ分割」による、複数の多角形からなるフロア構造を活かすため、多角形の各辺に対しソリッド シームレスの方向が垂直か平行になるようにした上で、机の上は明るさも確保されるようにランダム配置しました。

また、天井にはエキスパンドメタルという金網を使用している箇所があり、照明器具はその上に設置するため照度が落ちたり床に金網の影が出たりする可能性がありました。「これを解消するため、竹中工務店様など施工関係者を当社R&Dセンターにお招きして照明器具の取り付け位置の検証を実施。最適な位置を確認して設計に落とし込みました」(河野)。その他、外構の照明には、お客様のイメージに合ったH鋼型デザインの当社商品「arkia」のローポール照明を提案。竹中工務店様より好評をいただき即採用となりました。

「本件では執務室と会議室に国際標準規格の照明制御通信方式『DALI』を導入しましたが、建物の形状が特殊だったため、通常の配線とは違う細かい調整が求められました。着工後、商品が届いた現場で竹中工務店様や、電気施工を担当する朝陽電気様と相談を重ねて対応しました」(長府谷)。また、完成が迫った頃に新型コロナウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が発出。移動に制限がかかり、「『DALI』関連の調整は家具などを搬入した後の引き渡し直前まで続きました。世の中も現場も動揺していましたが、関係者同士で綿密にコミュニケーションを図ることで乗り越えました」(宮飼)

イメージ 提供:竹中工務店 三栄建設様鉄構事業本部新事務所の内部。「ボロノイ分割」による複雑な構造

栄誉に息づくKOIZUMIのDNA

三栄建設様の鉄構事業本部新事務所は、一般社団法人照明学会の「2020年度照明普及賞」を受賞。「違う発想」が活きた照明技術と照明効果が高い評価を受けました。「この栄誉の背後には、コミュニケーションをベースにした情報連携によって必ずやお客様のご要望に応えたいという、小泉産業グループのDNAが息づいていると思います」(田近)。当社の挑戦に終わりはありません。これからも知見の蓄積や、「違う発想」によって、お客様の理想の空間づくりをお手伝いします。

イメージ 提供:竹中工務店 新事務所の外観
イメージ 提供:竹中工務店 内部の「ボロノイ分割」の構造が、窓越しに奥行きをもって見ることができる

※1:ボロノイ分割:平面上に複数の母点を設定し、隣り合う母点間を結ぶ直線に垂直二等分線を引き、各母点の最近隣領域を分割する手法。今回はこれを3次元で実施し、空間をボロノイ分割している ※2:BIM:Building Information Modelingの略。建築物をコンピューターの3D空間で構築しさまざまな情報を持たせることで、企画、設計、施工、維持管理などの情報を一元管理する手法。2020年よりコイズミ照明は専業メーカーとして初のBIMデータ提供を開始している ※3:REALAPS:建築デザインの段階で建築物の完成後の見え方を正確に予測、検討できる設計支援ツール

河野 昂太郎
[照明設計]
コイズミ照明株式会社
市場開発本部
首都圏市場開発統括部
LCR東京 第1設計室(当時)
河野 昂太郎
宮飼 雄治
[開発営業]
コイズミ照明株式会社
市場開発本部
近畿市場開発統括部
大阪施設開発部 第2開発室
(当時)
宮飼 雄治
田近 拓巳
[開発営業]
コイズミ照明株式会社
市場開発本部
首都圏市場開発統括部
東京施設開発部 第2開発室(当時)
田近 拓巳
長府谷 大地
[営業]
コイズミ照明株式会社
市場開発本部
近畿市場開発統括部
大阪施設開発部
施設営業所(当時)
長府谷 大地